地域の中核病院としてハイリスク妊娠や胎児疾患などを積極的に受入れ、幅広い診療を行っています。関連施設である国立成育医療研究センターにスタッフを派遣し、最先端の医療提供に力を入れるとともに研究分野においても連携しています。また遺伝専門医を中心に出生前診断や遺伝カウンセリングの充実を図っています。
特色としては、後期流産・早産の防止・予防に力を注いでおり、早産のハイリスク群の抽出及び妊婦管理の実践、顆粒球エラスターゼを指標とした早期診断、ウリナスタチンによる予防治療などを実施しています。胎胞形成症例の妊娠継続などにも対応しています。また、大学病院という特性を生かし、他科との連携をとりながら様々な合併症妊娠の管理を行っています。腎炎、糖尿病、甲状腺疾患、自己免疫疾患、呼吸循環器疾患、てんかんなどの合併症に加えて、婦人科癌合併妊娠は婦人科との密接な連携により多くの管理実績を持ちます。出生前診断に関しては国立成育医療センターや附属病院(本院)を中心として、超音波検査、母体血清マーカー、羊水検査、MRI検査などを用いた診断に多くの実績があります。出生前診断された児の管理は、出生前から出生後の治療に関連する小児系、外科系などの医師と密接な連携をとり出生前後にわたってのグループ診療を実施しています。また、国立成育医療センターは高度先進医療を含む胎児治療を行っている日本でも有数の施設となっています。
生殖医療チームとの連携により、不妊治療に伴う合併症の管理を多く行っているほか、不育症に関しての数多い実績から、不育症妊娠後の妊娠・分娩管理は卓越したものを持ち、これらに伴う流・早産、胎児発育不全、妊娠高血圧症候群の発症予知及び発症した場合の治療を行っています。無痛分娩に関しても麻酔科のバックアップのもと数多く行っています。母体搬送の受け入れは附属病院(本院)や柏病院を中心に積極的に行っています。地域周産期センターとなっている附属病院(本院)は都内で2番目に多く母体搬送の受け入れを行っており、産科救急医療に貢献しています。
2012年8月より国立成育医療センターが総合周産期母子医療センターと認定されたほか、柏病院、葛飾医療センター、第3病院も地域の総合病院として産科救急医療搬送の積極的な受け入れ及び他科との連携に基づく集学的管理を行っています。
また研究面では、母児の予後改善に直結するようなテーマとして、“不育症と周産期合併症の関連性及びその管理”、“胎児・胎盤の画像診断の新たな指標の究明”、“妊娠中のストレスと周産期予後との関連”などが挙げられます。また、早産や胎児発育不全についての国内共同研究にも参加し、我が国の周産期医療水準の向上に役立つよう努めています。
産婦人科疾患全般について、各々の産婦人科専門医が高度な知識と技術をもって診療を担当しています。わが講座の伝統である卵巣がんをはじめに子宮頸がん・子宮体がん・絨毛がんなどの悪性疾患に対してエビデンスに基づいた最新の治療を積極的に取り入れ診療を行っています。婦人科腫瘍では、頻度が高い子宮筋腫や卵巣嚢腫といった良性腫瘍だけでなく悪性腫瘍にも力を入れており、悪性腫瘍症例数は、附属4病院を合わせて600症例におよび、国内でも有数の症例数を誇っています。特に進行卵巣がんの予後は完全手術(手術終了時に腫瘍がまったくなくなる手術)ができるか否かによって決まります。われわれは常に完全手術を実践し、国際臨床試験の最新の薬物治療を組み合わせ、卵巣がんの克服を目指しております。
附属病院 (本院) |
葛飾医療 センター |
第三病院 | 柏病院 | 4病院合計 | |
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卵巣がん | 54 | 19 | 17 | 60 | 150 |
卵巣境界 悪性腫瘍 |
18 | 9 | 5 | 34 | 66 |
子宮頸がん | 36 | 15 | 11 | 56 | 118 |
上皮内がん | 8 | 28 | 5 | 36 | 77 |
子宮体がん | 59 | 43 | 30 | 77 | 209 |
子宮内膜 異型増殖症 |
9 | 6 | 0 | 2 | 17 |
その他 | 5 | 12 | 5 | 9 | 31 |
悪性腫瘍総数 | 189 | 132 | 73 | 276 | 670 |
生殖内分泌外来では、妊娠を望まれる方に対し、一般不妊治療から生殖補助医療に至るまでの幅広い治療を行っております。早発卵巣不全や子宮内膜症の方、比較的高齢の方などへの卵巣予備能を意識しながらの不妊治療や、がん生殖医療1など妊孕性温存治療にも力を注いでおります。また、妊娠に向けての内視鏡(腹腔鏡・子宮鏡)手術は生殖医療担当医自身が手がけております。
不妊症専門外来では、大学附属病院という利点を活かし、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮内膜ポリープなどの疾患を合併している不妊症の方に対し、腹腔鏡や子宮鏡を用いた低侵襲手術を行っています。悪性腫瘍などに対する抗がん剤治療や放射線療法により、妊孕性喪失の可能性がある患者さんに対して、男性であれば精子凍結、女性であれば胚や未受精卵の凍結を行うことで、妊孕性の温存治療を行なっています。
一般不妊治療では、年間で約300周期の人工授精(AIH)を行っています。生殖補助医療(ART)として、体外受精(IVF)および顕微授精(ICSI)をてがけ、年間約200件の採卵治療を行っています。日本産科婦人科学会の会告に従い単一胚移植を基本とし、凍結融解胚移植も積極的に行うことで、多胎妊娠の発生減少を心がけながら、妊娠成績の向上をめざしています。
高度な生殖医療技術を追求していくことのみならず、不妊患者さんへのカウンセリングにも取組んでいます。40歳以降の高齢不妊症例や、若年で卵巣予備能の低下を来す早発卵巣不全症例など、難治症例に対する豊富な臨床経験があるのも当部門の特徴です。妊娠をめざす治療を中心としながら、残念ながら成果が得られなかった場合の、不妊治療終結の在り方についても、カウンセリングを含めた取組みを行っています。
不育症専門外来では不育症の原因に応じて治療を行っています。 抗リン脂質抗体症候群患者およびプロテインC欠損症などの血栓症素因患者に対するアスピリン・ヘパリン療法などを行っており、約85%の成功率を得ています。
1がん生殖医療とは
若い患者さんに対するがん治療は、その内容によっては卵巣や精巣などの性腺機能不全になったり、子宮・卵巣・精巣など生殖臓器の喪失により将来子どもを持つことが困難になることがあります。医療者と患者さんにとって、最大のゴールは病気を克服することであるため、これまではがん治療によるこれらの問題点には目をつぶらざるを得ませんでした。しかし、最近はがん診療の飛躍的進歩によってがんを克服した患者さんの治療後の生活の質(QOL=quality of life)にも目が向けられるようになってきました。子宮がんや卵巣がんに対する子宮や卵巣を温存する手術、放射線治療から卵巣を保護する手術、さらには生殖補助技術の進歩による精子や卵子、受精卵の凍結保存などは広く普及するに至っています。最近では卵巣を組織ごと凍結保存して、がん治療の終了後に再度体内に移植する技術も確立されつつあります。現在、がん治療で通院中の方、これからがん治療を受ける予定の皆さんを対象に、がん治療による不妊の予防や対策についてご相談を行なっています。またAYA生殖カウンセリング外来では、がん治療後に小児科で経過観察されていた患者さん(がんサバイバーの方)が成長していく過程で経験する思春期の体調の変化に焦点を当て、将来妊娠する可能性の評価や学校生活や社会での活動などの支援・カウンセリングを行います
当院では不妊症および不育症の専門外来を設けています。私たちは不妊症と不育症を別個のものとしてではなく、病態の一部を共有するものと考え、日々の診療にあたっています。この両専門外来間ではシームレスに治療を行い、さらには産科系外来とも緊密に連携をとることで、妊娠成立から出産に至るまで、継続的な医療を提供しています。
当院の特徴としては、卵巣予備能低下症例(早発卵巣不全など)の治療に豊富な経験を持つこと、若年がん患者さんの妊孕性温存のためのがん生殖医療に積極的に取組んでいること、また、大学病院の特色を活かし、合併症を持つ方の治療や手術を要する難治症例にも対応しています。
これまで当科では、産科部門、婦人科部門、生殖・内分泌部門と3本の柱で構成されていましたが、女性のQOLの維持・向上のために女性に特有な心身にまつわる疾患を主に予防医学の観点から取り扱う部門として、4本目の柱である女性医学を取り入れています。
更年期障害を中心に診療していましたが、現在は思春期医学や手術による外科的閉経の患者などのヘルスケアも行っています。今後は女性アスリートや小児悪性腫瘍治療後のヘルスケアにも携わっていきたいと考えています。
女性医学は、ライフスタイルに合わせた健康寿命を維持するため特に今後の高齢化社会においても重要な分野と考えています。 現在は周閉経期から老年期にかけての心身の変化に対応する更年期医学を中心に、思春期医療や外科的閉経なども診療にあたっています。十分に時間をかけて問診をとり、患者様の社会的背景や心理的因子の有無を確認しつつ、ホルモン補充療法、漢方療法、自律神経調整剤など用いた治療を行っています。患者様は最初から婦人科を受診するとも限らず、他科で不定愁訴に対し精査を勧められた上で最終的に女性ホルモン関連の疾患と疑われ紹介されるケースも多いです。また逆に精神症状が強い場合は専門医の受診を勧め精神科へ紹介するケースもあります。他科との連携が治療過程に非常に重要となる場合もあるのが特徴的です。 また当講座では悪性腫瘍手術件数が多く、閉経前の症例も少なくありません。そうした外科的閉経による健康障害は多く報告されており、当科では骨代謝の変化やホルモン補充療法に関する研究を行っています。
現在は毎週火曜日午後に女性外来として、初診の他、一般婦人科外来や他科からの紹介の患者の診療を行っています。
現在は周閉経期から老年期にかけての心身の変化に対応する更年期医学を中心に、思春期医療や外科的閉経なども診療にあたっています。十分に時間をかけて問診をとり、患者様の社会的背景や心理的因子の有無を確認しつつ、ホルモン補充療法、漢方療法、自律神経調整剤など用いた治療を行っています。
患者様は最初から婦人科を受診するとも限らず、他科で不定愁訴に対し精査を勧められた上で最終的に女性ホルモン関連の疾患と疑われ紹介されるケースも多いです。また逆に精神症状が強い場合は専門医の受診を勧め精神科へ紹介するケースもあります。
他科との連携が治療過程に非常に重要となる場合もあるのが特徴的です。