AIKOU’s voice

2024.06.24

朝カンファレンス

 おはようございます。いつも世界の女性とこどもを幸せにするためにがんばっていただきありがとうございます。
本日は岡本教授に代わり、上出がお話をさせていただきます。

 私は3月まで、3年間、厚労省及びこども家庭庁に行かせていただきました。そこで私が何を学び何を感じたかについて、本日一部をお話させていただきます。

 私が主に担当していたのは、出生前検査、母体保護法、ヒト受精胚にゲノム編集技術を用いる基礎研究の指針などです。これらの施策については様々な考えがある分野で、役所という立場柄、それぞれの立場や相反する立場の方からご意見をいただきました。例えば、母体保護法は人工妊娠中絶を取り扱いますが、その観点からは、このボイスの冒頭で話されている、女性の幸せとこどもの幸せには相反する場合もあります。リプロダクティブヘルスアンドライツと胎児の生命の尊重ということの両立は難しい場合があるということです。

 それぞれのお立場の方からお話を伺うと、その方々達なりの価値観や理屈があります。産婦人科の中だけでは知ることのできなかった世界を知ることができ、自分自身としての視野は広がったと思いますし、同時に、自分自身の考えと異なっても、その相手の意見を聞くということも重要であることを学びました。

 また、ヒト受精胚の基礎研究については、例えば、ミトコンドリア病に対して卵子間核置換などを行う基礎研究の指針作成などを行っておりました。技術的には、受精胚に対してゲノム編集や遺伝子導入などを行えば、特定の疾病を防げる可能性もありますが、その技術をヒトに用いてよいか、また、子宮に戻せば生命の誕生につながるヒト胚を医学の発展のためとはいえ、基礎研究の材料としてよいかなど、といわゆるELSIを考えていく必要があります。産婦人科の分野は正に、最先端の技術とELSIを取り扱っている分野であり、おそらく人類が永遠に向き合い続けるテーマであると思います。行政という環境に身を置いてみて改めて、産婦人科領域の奥深さを感じました。

 今回例として上げたこと以外にも様々な施策を経験しましたが、私自分の考えとは別に省庁の立場ということで進める必要がありました。また、前述のように、両論のある施策に携わってきたことから、進むも引くも地獄のような状況もありました。基本的には省庁の作法を守りながら、その中で自身の医師として、産婦人科医としてのアイデンティティは忘れず、何かチャンスがあれば施策を進められないかということは考えておりました。

 長くなりましたが、産婦人科は研究、臨床、そして行政としても奥深く、そしてやりがいのある分野であります。世界の女性とこどもを幸せにするために、自身のアイデンティティを忘れず、またお互いの話を聞きながら、医師として進めていければよいと思っております。

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