AIKOU’s voice

2020.11.16

朝カンファレンス

 皆さん、おはようございます。毎日、患者さんのために、産婦人科講座のために、そして世界の女性と子供を幸せにするために頑張ってくださり心より感謝申し上げます。

  さて、先日新聞を読んでいたら、ふかわりょうさんの「略語」に対する興味深いお話が載っていました。ふかわさんは「三軒茶屋」のことを「三茶」と略したり、「二子玉川」を「二子玉」と略す表現には抵抗があるそうで、「略すにはしかるべき経験と時間が必要だ」とも述べていました。私も昔、国立がんセンターで研究の日々を送っていた時に、ミーティングで「ハイブリダイゼーション」という言葉を「ハイブリ」と略した人に対してボスが叱っていたのを覚えています。その際ボスは、「略した言葉を使わず、皆がわかる正式な言葉を使いなさい」と注意していました。もしかしたらボスの言葉には「まだ研究者として駆け出しなのに生意気にも略語を使うな」という意味も込められていたのかもしれません。しかし、皆がわかる言葉を使うということはとても重要なことだと思います。
われわれのミーティングでも略語は多いですね。例えばTVUS(Transvaginal ultrasound)THLなど。もちろん、産婦人科の中でだけならいいのですが、これをそのまま他科のコンサルテーションの時に使用してはいけませんよ。
また、略語とはちょっと異なりますが、BRCA遺伝子の言い方も「ブラカ」という人がいます。特に欧米の人は「ブラカ」と発音するのですが、日本人は「ビーアールシーエー」と発音してほしいと思います。BRCA遺伝子は乳がんの原因遺伝子として世界中がものすごい勢いでその単離を目指していました。そのBRCA遺伝子を日本人の三木先生が見事単離されたのです。単離された遺伝子の読み方は「ビーアールシーエー」です。ところがその後に出てきたBRCA遺伝子病的バリアントを検出するテストがBRCA testでその読み方は「ブラカ」だったので、そこから多くの欧米人はBRCA遺伝子のことを「ブラカ」と呼びはじめたのです。ですが、欧米人でもきちんとした方は「ビーアールシーエー」と呼んでます。そのような歴史を知っておくことは重要だと思います。
またもう一つ、これは残念なのですが、乳がんに関するもう一つの遺伝子で有名なのはHER2遺伝子ですが、これも本当は日本人の山本先生がc-erbB2遺伝子という名前で最初に単離され論文化されたのですが、その1か月後のアメリカ人研究者が同じ遺伝子をHER2という名前で論文化し、その直後に他の研究所からneuという名前で発表されました。そういう意味ではc-erbB2/HER2/neuが正しい名称なのですが、一番呼びやすいHER2が当たり前のように使われております。これに関しては残念でなりません。実は山本先生は私の大先輩でいらっしゃいますので、以前山本先生にそのことをお話した際は山本先生も「そのことを知っている人はどんどん少なくなっているので残念だ」と仰っていました。

話が少しずれましたが、様々なものにはそれぞれ生まれた時の背景や歴史があり、そのような歴史は尊重するべきだと思いますし、他の科にコンサルトする時は略さず誰にでもわかる正式名を使うようにしてください。それでは今週もよろしくお願いします。

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