AIKOU’s voice

2021.12.20

朝カンファレンス

 毎日世界の女性と子供を幸せにするために頑張っていただきありがとうございます。

 先週、日本産科婦人科遺伝診療学会に参加し、中村祐輔先生の講演を拝聴しました。中村祐輔先生はもともと外科医で、遺伝性ポリポーシスがきっかけで1980年代に基礎研究の世界に入り、アメリカのユタ大学でも研究され、その後当時のいわゆる遺伝子研究のオーソリティーとなられました。私ががんセンターで研究していた当時、まさにカリスマで世界の遺伝子研究のトップを走る方でした。ちなみに中村先生のお弟子さんが三木先生というBRCA1遺伝子を単離同定されており、また、本学学長の松藤先生も中村先生と同じユタ大学に留学されました。
今回の中村先生の講演はAIホスピタルに関するもので、私はその内容にとても刺激を受け感銘を受けました。AIを駆使した新しいホスピタルの目的は、医療従事者の負担軽減と医療の質の向上です。人間以外でもできる事はAIにさせ、それによりヒューマンエラーをなくし、医療従事者の負担を軽減させる。例えば、方言や話し方のくせもすべてAIに学習させてカルテやオーダーの入力を音声入力にしたり、関連する症状と病気をAIに学習させ、問診から行うべき検査や考えるべき疾患を選別し、検査結果から正確な診断を導いたりするなどです。ただし、すべてが0か1かで分けられるわけではなく、検査の結果にも、医師によって診断が異なるグレイゾーンがありますので、そういうグレイゾーンはいくら機械にいろいろなことを学習させたところで0にはならないそうです。ですから最終的には、そこは医師が診断することになります。ただ、今後機械が人間と同等になる可能性はあるわけで、診断に関しては10年以内などそれほど遠くないうちに実現する可能性はあるそうです。その一方、中村先生は手術に関してはまだ35年はかかりそうだとも予想してました。その理由としては、一分一秒が重要になる場での機器の処理速度の課題が挙げられます。例えばロボット手術の場合、機器を遠隔操作するといっても、今の5Gの通信速度をもってしても0.5秒のラグが生じてしまうそうです。つまり、遠隔で手術をする時、医師は0.5秒前の状態を見て手術を進めないといけないということで、これでは手術の質の担保は難しくなってしまう、ということでした。
このAIホスピタルは大阪大学、慶應大学を始め全国の病院で少しずつ始まってきております。慈恵もこの流れに乗り遅れないようにしないと、と思いますし、これに限らず我々は様々な医療技術の進化にフレキシブルに対応・順応していくことが重要だと思います。今は電子カルテのモニターばかりを見て、患者さんの目を見て話を聞いたり説明をしたりする時間が減っている人もいるかもしれませんが、どんなに医療技術が進歩しても、可能な限り患者さんの目を見て親身になって対話するという基本的な姿勢はずっと忘れずにいてほしいと思います。それでは今週もよろしくお願いします。

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